去年にアンバサダー・プログロムにて無料配信されたFCソフトの一本。
実はファミコンのローンチソフトであると共に、同時発売の「ドンキーコング」の続編という一風変わった存在である。しかし、その「ドンキーコング」はアンバサダー・プログラムの配信ソフトには含まれていない。
さらに本作の特異な点はあのマリオが敵であるということ。ストーリー的には、前作「ドンキーコング」において、ドンキーコングにさらわれたレディをマリオが助けに行く、というものであるのに対し、今作の「ドンキーコングJR.」ではなぜかドンキーコングがマリオにさらわれており、それを子供のドンキーコングJrが助けに行くというものである。設定上はこれ以上踏み込んだ解説はなく、なぜマリオがドンキーコングをさらったのか等は明らかにされていない。ただ、さらわれた父親をその子供が助けに行く、という心温まるストーリーなのにその敵がマリオというのは、彼がすっかりゲーム界の大御所となった現代においてはいささか衝撃的である。しかも、ワニや鳥を放ったり電撃をしかけたりと、Jrの救出を妨害するその手段がかなりえげつない。マリオの歴史に存在してはいけない作品では?とやや気にかかるところだが、当の任天堂がこれを「アンバサダー」に対する無料配信ソフトとしたのはどういう意図があったのか。
余計な詮索はここまでにして、システムの説明。
ひとつのステージが1画面で構成されているサイドビュージャンプアクション。全4ステージ。Jrが行えるアクションは横移動とジャンプ及びロープの上り下りのみで攻撃はできない(ロープはステージによって植物のツタだったり鎖だったりするが本記事ではまとめて「ロープ」と呼ぶ)。基本的に敵については逃げるかかわすかしか対処のしようがないが、ステージ中に点在するフルーツを取るとフルーツが垂直落下するので、これを敵にぶつけることでやっつけることができる。
ステージ1~3はステージ上部にあるカギの隣りの足場にたどり着ければクリア。なお、その足場の隣りには必ずロープがあるのだが、これに掴まれば自動的に上って足場に着地するので、実質このロープに掴まればクリアである。最終面のステージ4はドンキーコングの檻の下に8本のロープがぶら下がっており、その下に6個のカギが配置されている。これらのカギはロープを上ることによって上へ押し上げることができるので、6個全てを上の鍵穴まで押し上げられればクリアとなる。
プレイ中は画面右上にボーナス値が表示されており、およそ3秒で100ずつ減っていく。クリアした際のボーナス値がそのまま得点に加算される。
得点については他に、敵をジャンプで飛び越える(100点)、フルーツを取る(400点)、落下したフルーツで敵を倒す(1匹:800点、2匹連続:1200点、3匹連続:1600点…)、ステージ4のみだがカギを鍵穴に入れる(200点)、といったことでも加算される。特にフルーツの、一度に巻き込んだ敵が多ければ多いほど倍々的に増加する得点の仕組みが良く、敵を倒した時に鳴るエフェクト音も爽快なので、つい狙っていきたくなる。
「敵をジャンプで飛び越える」についてはステージ2と3でのみ実践可能。なぜか1では飛び越えても得点が増えない。また4は飛び越えられるような位置に敵が来ないため、こちらは物理的に無理。ちなみに、ステージ3に限り1回のジャンプで2匹の敵を飛び越えられることがあるが特別ボーナスはなく100点のままである。
なお、20,000点獲得時点で一度だけ1UPする。
Jr自身の攻撃手段がないのは前述のとおりだが、その割にミスの条件はいろいろある。敵との接触や足場の無いところに落下は当たり前として、足場があってもJrの背丈以上の高さからの落下だとミス、さらにボーナスがゼロになってもミスである。つまり、ボーナスは制限時間の意味合いも兼ねている(正確にはゼロになると即座にミスになるわけではなく、ゼロになってから約3秒後にミスとなる)。まあ、ボーナスの方は相当時間をかけないとゼロになることはないのであまり問題ではないが、高所落下については慣れないと理不尽に感じるときがある。特にその問題が顕著に表れるのはよりによって攻略ルート上アップダウンが求められるステージ1であるというのも辛い。
ステージ4をクリアするとドンキーコングを救出できたことを表現する簡潔なデモが流れるが(この際、マリオは高所落下により死亡したと思われる演出がなされる)スタッフクレジットやエンディングといった演出はなく、すぐさま2周目が始まる。なお、2周目になると画面右上の「L」の項目の表記が「2」となり2周目になったことを表している。ちなみに、「L」とはレベルではなくループの頭文字である。ループを重ねると敵の数が増えたりスピードが速くなったりして難易度が上がる。しかし、ボーナスの初期値については1周目は5000だが1ループごとに1000ずつ増えていく(8000で打ち止め)。
スコアは999,900点がMAX。これを越えると0に戻ってしまい、カンストはしない。しかし、一度999,900点を達成すればTOPスコアは999,900点で保持される。大体25~27ループ目で達成できると思う。MAXスコアを狙うには現在のスコア+クリア時のボーナス値=999,900、となるようにすればよい。簡単な足し算だが、時間をつぶさなければならない場合は敵の動きに注意。
ゲームモードはAとBがあり、Bの方がやや難しくなっている(おそらくAのループ3or4とBのループ1が同じ)。TOPスコアも別々に保存されるが、1Pと2Pの違いについてはTOPスコアは共通となっている(つまり1PのモードAと2PのモードAのTOPスコアは共通)。
プレイしての感想であるが、まあファミコンローンチソフトということでハードルは否が応にも下がってしまうのはご了承。しかし、後代まで継がれていくことになるアクションゲームのポイントがひととおり網羅されている点は評価されるべき。1画面のみのステージがたった4つしかないのであるが、そこに求められるアクション性はなかなかに高い。さすがに数回のループで飽きてしまうのは致し方ないが、上記MAXスコアを目標として暇つぶしにプレイするには丁度良い。また、唯一?マリオが悪役で登場するゲームなので、そういう意味での価値もあるかもしれない。
難を挙げるとすれば、この時代のソフトは大体そうであるが、「難易度調整がややおかしい」というところか。あくまでも筆者感覚の話となってしまうが、このゲームで一番難しいのはステージ1だと思う。ループ数が少ないうちはその限りではないが、数ループもすれば確実にそうなる。理由は以下箇条書き。
1、スタート地点が安全地帯ではない。
2、敵の動きがパターン固定ではなく、状況によっては絶対逃げられないこともある。
3、敵から逃げようとして高所落下ミスになりやすい。
4、最上段で敵が集まると表示数の限界で敵が見えなくなる時がある。
5、同じく最上段の段差は近づきすぎるとジャンプができなくなる、という罠がある。
逆に最も簡単なのはステージ2。初めのジャンプ台で動くリフトに直接乗ってショートカットしたら、後半の鳥地帯はパターンで覚えれば楽に突破できる。筆者が最短時間でクリアできるのもこのステージ2である(ボーナス値の減少は400点のみ)。なお、動くリフトであるが、ループを重ねると移動範囲が狭まるため一見ジャンプ台を使っても届かないように見えるが、タイミングが合えばギリギリ届くようになっている。
本作の重要なテクニックは「ロープの掴み方」である。どのステージもロープは必ず2本以上が隣り合って配置されている。Jrがロープに接触するとその1本のロープを両手で掴む。ここで方向キーを隣りのロープ側に押すと左右の手にそれぞれ別のロープを掴んだ状態になる(2本持ち)。上にのぼる場合はこの2本持ちが速い。逆に下におりる場合は1本持ちの方が速い。さらに、スピードの比較だけで述べると2本持ちでのぼるより、1本持ちでおりる方が速い。逆に一番遅いのは1本持ちでのぼる場合。
これは単純に移動スピードが速ければクリア時のボーナス値も高くなるという意味もあるが、それよりも重要なのは敵のかわし方、という意味である。ループを重ねると敵の攻撃は激しくなる。フルーツで撃退してもすぐにマリオが補充してくるので戦況の改善は見込めない。己の回避術を鍛えなければ決して生き残ることはできないのだ。そこで重要になるのがこの「ロープの掴み方」。2本持ちのぼりと1本持ちおりはワニ型の敵の動きより速いので上下方向だけであれば確実に逃げられる。覚えておくべし。
あと、筆者が独自に編み出した小技が3つあるので紹介したい。
【小技1:1ループあたりの得点をなるべく高める方法】
(ループ数を重ねてから)ステージ2と3において、ゴール目前でひたすら敵を飛び越える。1回あたりたったの100点だが、ボーナス値は約3秒で100点減るのと比べるとそれ以上の得点効率である。ただし、これはあくまでも1ループあたりの得点効率であって、時間的な効率という意味ではどのステージも急いでクリアしてなるべくボーナス値を稼いだ方が良い(3DSVCではまるごとバックアップが使えるので、こまめに保存しながら進めれば残機を失うことなくループを重ねることは容易)。
【小技2:ジャンプ連打で得点を稼ぐ】
小技1に関連するが、ステージ2の最上段の鳥が来ない右側の足場まで行き、そこからちょっとだけ左にはみ出した状態で右向きで立つ。鳥には当たらないが、その場で垂直ジャンプをすると下に行ったはずの鳥を飛び越えたことになり得点が入る。
汚い下図参照↓

【小技3:鳥1羽を2回飛び越える】
小技2において、ジャンプしてから着地ギリギリのタイミングで得点が入るようにし、すぐまたジャンプすると2回得点が入る。これは、「Jrがジャンプしている時の後ろ足側に敵がいると得点加算」という仕様だからだと思われる。
なお、これらの小技は必ず100点ずつしか加算されないので、999,900点目前での調整方法としては確実な手段である、という意味ではオススメである。
さて、MAXスコアを目指すにあたり何周もループしているうちに、ふと疑問に感じたことがある。
「このゲームは何ループまであるのだろうか。」
幸い、本作は1ループにさほど時間がかからない。慣れれば3~4分である。「飽き」との戦いではあるが、MAXスコア達成のついでに、このゲームのMAXループ数を調べてみることにした。
題して、「ドンキーコングJR. 限界への挑戦」である。
以下にループ数とその時の画面上のループ表記をまとめる。
【 ループ数 : 画面上のループ表記 】
1 : 1
2 : 2
3 : 3
4 : 4
5 : 5
6 : 6
7 : 7
8 : 8
9 : 9
10 : A
11 : B
12 : C
13 : D
14 : E
15 : F
16 : G
17 : H
18 : I
19 : J
20 : K
21 : L
22 : M
23 : N
24 : O
25 : P
26 : Q
27 : R
28 : S
29 : T
30 : U
31 : V
32 : W
33 : X
34 : Y
35 : Z
36 : (無表示)
37 : 画面右上に表示されている残機数の左カッコの上半分(最初は逆さまの音符と勘違いした)
38 : 画面右上に表示されている『BONUS』ロゴの“B”と“O”の左側ギリギリ(B1に見えた)
39 : 同じく『BONUS』ロゴの“O”の残りと“N”の左半分(Dトに見えた)
40 : 同じく『BONUS』ロゴの“N”の右半分と“U”(JUに見えた)
41 : 同じく『BONUS』ロゴの“S”
42 : 残機数とBONUSの中間にある背中合わせのカッコの上半分(やはり逆さまの音符に見えた)
43 : 残機数の左カッコの下半分
44 : 残機数とBONUSの中間にある背中合わせのカッコの下半分
45 : ループ表記の右カッコの上半分
46 : !
47 : ループ表記の右カッコの下半分
48 : 檻に入ったドンキーコングのグラフィックを縦に4マス(1~4)、横に6マス(A~F)に分割した時の1-A(パレットの配色もおかしく、これがドンキーコングだと気付いたのはだいぶ後である)
49 : 同上 2-A
50 : 同上 3-A
51 : 同上 4-A
52 : 同上 1-B
53 : 同上 2-B
54 : 同上 3-B
55 : 同上 4-B
56 : 同上 1-C
57 : 同上 2-C(まるい図形が描かれているがこれがドンキーコングの口部分と合致することからドンキーコングのグラフィックの分割であると判明)
58 : 同上 3-C
59 : 同上 4-C
60 : 同上 1-D
61 : 同上 2-D
62 : 同上 3-D
63 : 同上 4-D
64 : 同上 1-E
65 : 同上 2-E
66 : 同上 3-E
67 : 同上 4-E
68 : 同上 1-F
69 : 同上 2-F
70 : 同上 3-F
71 : 同上 4-F(ドンキーコングここまで)
72 : マリオの左上部分(やはりパレットが変、以下のグラフィックも全て変)
73 : マリオの左下部分
74 : マリオの右上部分
75 : マリオの右下部分
76 : カギの左上部分
77 : カギの左下部分
78 : カギの右上部分
79 : カギの右下部分
80 : 赤いフルーツ、左上(赤いフルーツの4枚だけパレットが正常)
81 : 赤いフルーツ、左下
82 : 赤いフルーツ、右上
83 : 赤いフルーツ、右下
84 : バナナ、左上
85 : バナナ、左下
86 : バナナ、右上
87 : バナナ、右下
88 : 黄色いフルーツ、左上
89 : 黄色いフルーツ、左下
90 : 黄色いフルーツ、右上
91 : 黄色いフルーツ、右下
92 : ステージ1に配置されているツタ(ロープ)
93 : 同上、葉っぱ付き
94 : ステージ1、2の土の足場
95 : ステージ1、2の島の足場左端
96 : 同上、中部分
97 : 同上、右端
98 : 同上、幹?部分
99 : 海の波
100 : 海の中(ただの四角塗り潰しだが、ここまでの流れからそう判断した)
101 : ステージ2、4に配置されている鎖(ロープ)
102 : 同上、鎖の下部分
103 : ステージ4の画面端にある鎖状の壁
104 : ステージ4の檻を縛っているロープを止めている杭
105 : ステージ4の足場の上半分
106 : 同上、下半分
107 : ステージ4の鍵穴の上半分
108 : 同上、下半分
109 : ステージ4の逆さカギのグラフィックを縦2マス(1~2)、横3マス(A~C)に分割した時の1-A
110 : 同上 2-A
111 : 同上 1-B
112 : 同上 2-B
113 : 同上 1-C
114 : 同上 2-C(逆さカギここまで)
115 : ステージ3の足場の左上角
116 : 同上、左下角
117 : 同上、中部分の上側(歩ける部分)
118 : 同上、中部分の下側(天井)
119 : 同上、右上角
120 : 同上、右下角
121 : ステージ3の天井の電流(敵ではなく)
122 : ステージ3のロープ
123 : ステージ3の天井で青いスパークが下に降りる地点
124 : 青いスパークの空中の通り道
125 : ステージ4の檻を縛っているロープ左側
126 : 同上、右側
127 : 同上、檻との接合部、右側
128 : 同上、檻との接合部、左側
129 : ステージ3でマリオが使っているレバーの取っ手
130 : 同上、レバーの本体左側
131 : 同上、右側
132 : ステージ2の動くロープを支えている棒
133 : 上記のロープを動かしているローラー左上(ここでボーナス初期値が9000に増える)
134 : 同上、ローラーの左下(ボーナスがE800になる…実質14800)
135 : 同上、ローラーの右上(ボーナスがC000になるがステージ1がスタートする前にバグってフリーズ)
…ということで、実質134ループで終わりである。
48ループ目から始まったグラフィックパーツ地獄が辛かった。まさかグラフィックが来るとは思わなかった。正直なところ、アルファベットの「Z」でまた「1」に戻るだろうと予想していたからだ。しかし、乗りかけた船なので根性で継続した。すると、アクションゲームであるはずの本作が、パズルのピースから正解図を答えるクイズのような感覚に思えてきた。最大キャラであるドンキーコングを序盤で突破しているので、残りのキャラは皆小さいことを踏まえると幾分気は楽になった。
だが92ループ目でまた地獄を見ることになる。なんとキャラだけでなく、地形のグラフィックが出てきたのだ。これでまた先が見えなくなった。しかし、気付けば大台の100ループを突破したこともあり、もはや諦めることはできない状況となっていた。
133ループ目。ここで嬉しい変化点が訪れる。これまでずっと8000で固定だったボーナス値が、ここにきて9000に上昇したのだ。スタッフはここから先、まだ何か仕掛けてくれているのかもしれない、と淡い期待がこみ上げたのだが、その反面敵の勢いが弱まっているのが不安であった。出現上限数が明らかに減っているのだ。今思えば135ループ目で起こる惨劇のフラグであったわけだが、その時は「嵐の前の静けさ」だと捉えていた。
134ループ目。ボーナス値がE800という変則的な値に上昇。クリア後に加算される得点から逆算すると「14800」を表しているようだ。とんだ大盤振る舞いである。しかし、ゲーム難度はさほど変化なし。いよいよ怪しくなってきた。
そして、135ループ目。ボーナス値がなぜかC000に減少したと思ったら、そのままステージ1が動き出すことはなく、画面表示が大幅にバグって止まってしまったのである。なんとも悲しい最期であったが、同時に「やっと解放された」という安堵もあった。しかし、MAXスコアを達成したもののフリーズしてしまったため結局リセットするしかなくなってしまった。せっかくのMAXスコアだがクリアせざるを得ない。このまま「まるごとバックアップ」しても遊ぶことはできないのだから。ちなみに、リセットしても画面のバグった表示は完全に直らなかった(システム的にゲームの進行には影響ない模様)。つまり、本ソフト起動中に電源ボタンを押す終了方法をとるしかない(これでファミコンでいう電源を入れなおした状態になる)。
どうせ30ループ弱でMAXスコアは達成できる。134ループに比べれば楽な話だ。仕方なくまた初めからプレイし、A・B両モードのMAXスコアを達成しゲームオーバーになったところで、筆者の中での本ソフトのプレイは完全に終了した。
実はファミコンのローンチソフトであると共に、同時発売の「ドンキーコング」の続編という一風変わった存在である。しかし、その「ドンキーコング」はアンバサダー・プログラムの配信ソフトには含まれていない。
さらに本作の特異な点はあのマリオが敵であるということ。ストーリー的には、前作「ドンキーコング」において、ドンキーコングにさらわれたレディをマリオが助けに行く、というものであるのに対し、今作の「ドンキーコングJR.」ではなぜかドンキーコングがマリオにさらわれており、それを子供のドンキーコングJrが助けに行くというものである。設定上はこれ以上踏み込んだ解説はなく、なぜマリオがドンキーコングをさらったのか等は明らかにされていない。ただ、さらわれた父親をその子供が助けに行く、という心温まるストーリーなのにその敵がマリオというのは、彼がすっかりゲーム界の大御所となった現代においてはいささか衝撃的である。しかも、ワニや鳥を放ったり電撃をしかけたりと、Jrの救出を妨害するその手段がかなりえげつない。マリオの歴史に存在してはいけない作品では?とやや気にかかるところだが、当の任天堂がこれを「アンバサダー」に対する無料配信ソフトとしたのはどういう意図があったのか。
余計な詮索はここまでにして、システムの説明。
ひとつのステージが1画面で構成されているサイドビュージャンプアクション。全4ステージ。Jrが行えるアクションは横移動とジャンプ及びロープの上り下りのみで攻撃はできない(ロープはステージによって植物のツタだったり鎖だったりするが本記事ではまとめて「ロープ」と呼ぶ)。基本的に敵については逃げるかかわすかしか対処のしようがないが、ステージ中に点在するフルーツを取るとフルーツが垂直落下するので、これを敵にぶつけることでやっつけることができる。
ステージ1~3はステージ上部にあるカギの隣りの足場にたどり着ければクリア。なお、その足場の隣りには必ずロープがあるのだが、これに掴まれば自動的に上って足場に着地するので、実質このロープに掴まればクリアである。最終面のステージ4はドンキーコングの檻の下に8本のロープがぶら下がっており、その下に6個のカギが配置されている。これらのカギはロープを上ることによって上へ押し上げることができるので、6個全てを上の鍵穴まで押し上げられればクリアとなる。
プレイ中は画面右上にボーナス値が表示されており、およそ3秒で100ずつ減っていく。クリアした際のボーナス値がそのまま得点に加算される。
得点については他に、敵をジャンプで飛び越える(100点)、フルーツを取る(400点)、落下したフルーツで敵を倒す(1匹:800点、2匹連続:1200点、3匹連続:1600点…)、ステージ4のみだがカギを鍵穴に入れる(200点)、といったことでも加算される。特にフルーツの、一度に巻き込んだ敵が多ければ多いほど倍々的に増加する得点の仕組みが良く、敵を倒した時に鳴るエフェクト音も爽快なので、つい狙っていきたくなる。
「敵をジャンプで飛び越える」についてはステージ2と3でのみ実践可能。なぜか1では飛び越えても得点が増えない。また4は飛び越えられるような位置に敵が来ないため、こちらは物理的に無理。ちなみに、ステージ3に限り1回のジャンプで2匹の敵を飛び越えられることがあるが特別ボーナスはなく100点のままである。
なお、20,000点獲得時点で一度だけ1UPする。
Jr自身の攻撃手段がないのは前述のとおりだが、その割にミスの条件はいろいろある。敵との接触や足場の無いところに落下は当たり前として、足場があってもJrの背丈以上の高さからの落下だとミス、さらにボーナスがゼロになってもミスである。つまり、ボーナスは制限時間の意味合いも兼ねている(正確にはゼロになると即座にミスになるわけではなく、ゼロになってから約3秒後にミスとなる)。まあ、ボーナスの方は相当時間をかけないとゼロになることはないのであまり問題ではないが、高所落下については慣れないと理不尽に感じるときがある。特にその問題が顕著に表れるのはよりによって攻略ルート上アップダウンが求められるステージ1であるというのも辛い。
ステージ4をクリアするとドンキーコングを救出できたことを表現する簡潔なデモが流れるが(この際、マリオは高所落下により死亡したと思われる演出がなされる)スタッフクレジットやエンディングといった演出はなく、すぐさま2周目が始まる。なお、2周目になると画面右上の「L」の項目の表記が「2」となり2周目になったことを表している。ちなみに、「L」とはレベルではなくループの頭文字である。ループを重ねると敵の数が増えたりスピードが速くなったりして難易度が上がる。しかし、ボーナスの初期値については1周目は5000だが1ループごとに1000ずつ増えていく(8000で打ち止め)。
スコアは999,900点がMAX。これを越えると0に戻ってしまい、カンストはしない。しかし、一度999,900点を達成すればTOPスコアは999,900点で保持される。大体25~27ループ目で達成できると思う。MAXスコアを狙うには現在のスコア+クリア時のボーナス値=999,900、となるようにすればよい。簡単な足し算だが、時間をつぶさなければならない場合は敵の動きに注意。
ゲームモードはAとBがあり、Bの方がやや難しくなっている(おそらくAのループ3or4とBのループ1が同じ)。TOPスコアも別々に保存されるが、1Pと2Pの違いについてはTOPスコアは共通となっている(つまり1PのモードAと2PのモードAのTOPスコアは共通)。
プレイしての感想であるが、まあファミコンローンチソフトということでハードルは否が応にも下がってしまうのはご了承。しかし、後代まで継がれていくことになるアクションゲームのポイントがひととおり網羅されている点は評価されるべき。1画面のみのステージがたった4つしかないのであるが、そこに求められるアクション性はなかなかに高い。さすがに数回のループで飽きてしまうのは致し方ないが、上記MAXスコアを目標として暇つぶしにプレイするには丁度良い。また、唯一?マリオが悪役で登場するゲームなので、そういう意味での価値もあるかもしれない。
難を挙げるとすれば、この時代のソフトは大体そうであるが、「難易度調整がややおかしい」というところか。あくまでも筆者感覚の話となってしまうが、このゲームで一番難しいのはステージ1だと思う。ループ数が少ないうちはその限りではないが、数ループもすれば確実にそうなる。理由は以下箇条書き。
1、スタート地点が安全地帯ではない。
2、敵の動きがパターン固定ではなく、状況によっては絶対逃げられないこともある。
3、敵から逃げようとして高所落下ミスになりやすい。
4、最上段で敵が集まると表示数の限界で敵が見えなくなる時がある。
5、同じく最上段の段差は近づきすぎるとジャンプができなくなる、という罠がある。
逆に最も簡単なのはステージ2。初めのジャンプ台で動くリフトに直接乗ってショートカットしたら、後半の鳥地帯はパターンで覚えれば楽に突破できる。筆者が最短時間でクリアできるのもこのステージ2である(ボーナス値の減少は400点のみ)。なお、動くリフトであるが、ループを重ねると移動範囲が狭まるため一見ジャンプ台を使っても届かないように見えるが、タイミングが合えばギリギリ届くようになっている。
本作の重要なテクニックは「ロープの掴み方」である。どのステージもロープは必ず2本以上が隣り合って配置されている。Jrがロープに接触するとその1本のロープを両手で掴む。ここで方向キーを隣りのロープ側に押すと左右の手にそれぞれ別のロープを掴んだ状態になる(2本持ち)。上にのぼる場合はこの2本持ちが速い。逆に下におりる場合は1本持ちの方が速い。さらに、スピードの比較だけで述べると2本持ちでのぼるより、1本持ちでおりる方が速い。逆に一番遅いのは1本持ちでのぼる場合。
これは単純に移動スピードが速ければクリア時のボーナス値も高くなるという意味もあるが、それよりも重要なのは敵のかわし方、という意味である。ループを重ねると敵の攻撃は激しくなる。フルーツで撃退してもすぐにマリオが補充してくるので戦況の改善は見込めない。己の回避術を鍛えなければ決して生き残ることはできないのだ。そこで重要になるのがこの「ロープの掴み方」。2本持ちのぼりと1本持ちおりはワニ型の敵の動きより速いので上下方向だけであれば確実に逃げられる。覚えておくべし。
あと、筆者が独自に編み出した小技が3つあるので紹介したい。
【小技1:1ループあたりの得点をなるべく高める方法】
(ループ数を重ねてから)ステージ2と3において、ゴール目前でひたすら敵を飛び越える。1回あたりたったの100点だが、ボーナス値は約3秒で100点減るのと比べるとそれ以上の得点効率である。ただし、これはあくまでも1ループあたりの得点効率であって、時間的な効率という意味ではどのステージも急いでクリアしてなるべくボーナス値を稼いだ方が良い(3DSVCではまるごとバックアップが使えるので、こまめに保存しながら進めれば残機を失うことなくループを重ねることは容易)。
【小技2:ジャンプ連打で得点を稼ぐ】
小技1に関連するが、ステージ2の最上段の鳥が来ない右側の足場まで行き、そこからちょっとだけ左にはみ出した状態で右向きで立つ。鳥には当たらないが、その場で垂直ジャンプをすると下に行ったはずの鳥を飛び越えたことになり得点が入る。
汚い下図参照↓

【小技3:鳥1羽を2回飛び越える】
小技2において、ジャンプしてから着地ギリギリのタイミングで得点が入るようにし、すぐまたジャンプすると2回得点が入る。これは、「Jrがジャンプしている時の後ろ足側に敵がいると得点加算」という仕様だからだと思われる。
なお、これらの小技は必ず100点ずつしか加算されないので、999,900点目前での調整方法としては確実な手段である、という意味ではオススメである。
さて、MAXスコアを目指すにあたり何周もループしているうちに、ふと疑問に感じたことがある。
「このゲームは何ループまであるのだろうか。」
幸い、本作は1ループにさほど時間がかからない。慣れれば3~4分である。「飽き」との戦いではあるが、MAXスコア達成のついでに、このゲームのMAXループ数を調べてみることにした。
題して、「ドンキーコングJR. 限界への挑戦」である。
以下にループ数とその時の画面上のループ表記をまとめる。
【 ループ数 : 画面上のループ表記 】
1 : 1
2 : 2
3 : 3
4 : 4
5 : 5
6 : 6
7 : 7
8 : 8
9 : 9
10 : A
11 : B
12 : C
13 : D
14 : E
15 : F
16 : G
17 : H
18 : I
19 : J
20 : K
21 : L
22 : M
23 : N
24 : O
25 : P
26 : Q
27 : R
28 : S
29 : T
30 : U
31 : V
32 : W
33 : X
34 : Y
35 : Z
36 : (無表示)
37 : 画面右上に表示されている残機数の左カッコの上半分(最初は逆さまの音符と勘違いした)
38 : 画面右上に表示されている『BONUS』ロゴの“B”と“O”の左側ギリギリ(B1に見えた)
39 : 同じく『BONUS』ロゴの“O”の残りと“N”の左半分(Dトに見えた)
40 : 同じく『BONUS』ロゴの“N”の右半分と“U”(JUに見えた)
41 : 同じく『BONUS』ロゴの“S”
42 : 残機数とBONUSの中間にある背中合わせのカッコの上半分(やはり逆さまの音符に見えた)
43 : 残機数の左カッコの下半分
44 : 残機数とBONUSの中間にある背中合わせのカッコの下半分
45 : ループ表記の右カッコの上半分
46 : !
47 : ループ表記の右カッコの下半分
48 : 檻に入ったドンキーコングのグラフィックを縦に4マス(1~4)、横に6マス(A~F)に分割した時の1-A(パレットの配色もおかしく、これがドンキーコングだと気付いたのはだいぶ後である)
49 : 同上 2-A
50 : 同上 3-A
51 : 同上 4-A
52 : 同上 1-B
53 : 同上 2-B
54 : 同上 3-B
55 : 同上 4-B
56 : 同上 1-C
57 : 同上 2-C(まるい図形が描かれているがこれがドンキーコングの口部分と合致することからドンキーコングのグラフィックの分割であると判明)
58 : 同上 3-C
59 : 同上 4-C
60 : 同上 1-D
61 : 同上 2-D
62 : 同上 3-D
63 : 同上 4-D
64 : 同上 1-E
65 : 同上 2-E
66 : 同上 3-E
67 : 同上 4-E
68 : 同上 1-F
69 : 同上 2-F
70 : 同上 3-F
71 : 同上 4-F(ドンキーコングここまで)
72 : マリオの左上部分(やはりパレットが変、以下のグラフィックも全て変)
73 : マリオの左下部分
74 : マリオの右上部分
75 : マリオの右下部分
76 : カギの左上部分
77 : カギの左下部分
78 : カギの右上部分
79 : カギの右下部分
80 : 赤いフルーツ、左上(赤いフルーツの4枚だけパレットが正常)
81 : 赤いフルーツ、左下
82 : 赤いフルーツ、右上
83 : 赤いフルーツ、右下
84 : バナナ、左上
85 : バナナ、左下
86 : バナナ、右上
87 : バナナ、右下
88 : 黄色いフルーツ、左上
89 : 黄色いフルーツ、左下
90 : 黄色いフルーツ、右上
91 : 黄色いフルーツ、右下
92 : ステージ1に配置されているツタ(ロープ)
93 : 同上、葉っぱ付き
94 : ステージ1、2の土の足場
95 : ステージ1、2の島の足場左端
96 : 同上、中部分
97 : 同上、右端
98 : 同上、幹?部分
99 : 海の波
100 : 海の中(ただの四角塗り潰しだが、ここまでの流れからそう判断した)
101 : ステージ2、4に配置されている鎖(ロープ)
102 : 同上、鎖の下部分
103 : ステージ4の画面端にある鎖状の壁
104 : ステージ4の檻を縛っているロープを止めている杭
105 : ステージ4の足場の上半分
106 : 同上、下半分
107 : ステージ4の鍵穴の上半分
108 : 同上、下半分
109 : ステージ4の逆さカギのグラフィックを縦2マス(1~2)、横3マス(A~C)に分割した時の1-A
110 : 同上 2-A
111 : 同上 1-B
112 : 同上 2-B
113 : 同上 1-C
114 : 同上 2-C(逆さカギここまで)
115 : ステージ3の足場の左上角
116 : 同上、左下角
117 : 同上、中部分の上側(歩ける部分)
118 : 同上、中部分の下側(天井)
119 : 同上、右上角
120 : 同上、右下角
121 : ステージ3の天井の電流(敵ではなく)
122 : ステージ3のロープ
123 : ステージ3の天井で青いスパークが下に降りる地点
124 : 青いスパークの空中の通り道
125 : ステージ4の檻を縛っているロープ左側
126 : 同上、右側
127 : 同上、檻との接合部、右側
128 : 同上、檻との接合部、左側
129 : ステージ3でマリオが使っているレバーの取っ手
130 : 同上、レバーの本体左側
131 : 同上、右側
132 : ステージ2の動くロープを支えている棒
133 : 上記のロープを動かしているローラー左上(ここでボーナス初期値が9000に増える)
134 : 同上、ローラーの左下(ボーナスがE800になる…実質14800)
135 : 同上、ローラーの右上(ボーナスがC000になるがステージ1がスタートする前にバグってフリーズ)
…ということで、実質134ループで終わりである。
48ループ目から始まったグラフィックパーツ地獄が辛かった。まさかグラフィックが来るとは思わなかった。正直なところ、アルファベットの「Z」でまた「1」に戻るだろうと予想していたからだ。しかし、乗りかけた船なので根性で継続した。すると、アクションゲームであるはずの本作が、パズルのピースから正解図を答えるクイズのような感覚に思えてきた。最大キャラであるドンキーコングを序盤で突破しているので、残りのキャラは皆小さいことを踏まえると幾分気は楽になった。
だが92ループ目でまた地獄を見ることになる。なんとキャラだけでなく、地形のグラフィックが出てきたのだ。これでまた先が見えなくなった。しかし、気付けば大台の100ループを突破したこともあり、もはや諦めることはできない状況となっていた。
133ループ目。ここで嬉しい変化点が訪れる。これまでずっと8000で固定だったボーナス値が、ここにきて9000に上昇したのだ。スタッフはここから先、まだ何か仕掛けてくれているのかもしれない、と淡い期待がこみ上げたのだが、その反面敵の勢いが弱まっているのが不安であった。出現上限数が明らかに減っているのだ。今思えば135ループ目で起こる惨劇のフラグであったわけだが、その時は「嵐の前の静けさ」だと捉えていた。
134ループ目。ボーナス値がE800という変則的な値に上昇。クリア後に加算される得点から逆算すると「14800」を表しているようだ。とんだ大盤振る舞いである。しかし、ゲーム難度はさほど変化なし。いよいよ怪しくなってきた。
そして、135ループ目。ボーナス値がなぜかC000に減少したと思ったら、そのままステージ1が動き出すことはなく、画面表示が大幅にバグって止まってしまったのである。なんとも悲しい最期であったが、同時に「やっと解放された」という安堵もあった。しかし、MAXスコアを達成したもののフリーズしてしまったため結局リセットするしかなくなってしまった。せっかくのMAXスコアだがクリアせざるを得ない。このまま「まるごとバックアップ」しても遊ぶことはできないのだから。ちなみに、リセットしても画面のバグった表示は完全に直らなかった(システム的にゲームの進行には影響ない模様)。つまり、本ソフト起動中に電源ボタンを押す終了方法をとるしかない(これでファミコンでいう電源を入れなおした状態になる)。
どうせ30ループ弱でMAXスコアは達成できる。134ループに比べれば楽な話だ。仕方なくまた初めからプレイし、A・B両モードのMAXスコアを達成しゲームオーバーになったところで、筆者の中での本ソフトのプレイは完全に終了した。
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2012.09.13 / Top↑
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